ドミナインタビュー第一弾 - 真珠女王様
どうしてSMに興味を持ったのか、どんなSM遍歴を辿ってきたのか、これからの抱負や、ラ・シオラに対して思うこと、などなどをインタビューしていきます。
真珠女王様へのインタビュー
2019年で在籍17年目、もはやラ・シオラのイメージとも不可分な真珠女王様。SMとの出会い、M男性との向き合い方、17年の軌跡を振り返って思うこと、これからの抱負など、プロデューサーのRie ASAGIRIさん、自身もラ・シオラでのドミナ経験のあるインタビュアー・早川舞との鼎談形式で伺いました。
「しもべは何人いらっしゃいますか」
早川舞(以下:早川)真珠さん、お久しぶりです。私がラ・シオラに在籍していたのは10年近く前になりますが、そのときとお変わりなくお美しい。それどころか、貫禄や存在感が増していらっしゃいますね。そのお美しさを保つ秘訣は何ですか。
真珠)自分が好きなことを、無理しないで続けているから、でしょうか。もともとお化粧やおしゃれが好きなんです。セッションも含め何事もそうですが、無理につくったり演技したりすることはあまりないですね。ナチュラルにやりたいことをやっています。
あとは会いに来てくださるM男性が、いつまでも崇拝してくれるようにきれいにしていたいというのもあるかしら。
Rie ASAGIRI(以下:朝霧) 真珠さんはいい成長の仕方をしているよね。今は「真珠様」だけど、入店当初は「真珠ちゃん」と呼びたくなる雰囲気もあって、あれはあれでよかった。
早川)入店したきっかけは何だったんですか?
真珠)昔から妙に男性に気遣ってもらうことが多かったんです。会社に勤めていたときも、社長に「お疲れになったでしょ?お茶でもご馳走させてください」とか。
それとは別に、一時期、M男性っぽい人に声をかけられることが続いたの。
その頃はまだM男性だとわからなかったですけどね。通勤途中や何でもないお出かけのときに、「ボンデージって知っていますか。すごく似合うと思う」とか、「そういう衣装を一式差し上げるので、撮影させてもらえませんか」とか、それはもう立て続けに。
早川)引き寄せてしまう時期があった。
真珠)極めつけは銀座の細い路地で、帽子をかぶった渋いおじさまに「今、しもべは何人いらっしゃいますか」と聞かれたりして。「いません」と答えたら、「それはけしからんですね。あなた様ぐらいの人は少なくとも5人ぐらい従えていなければ。まずはこの爺から」と話を進められそうになりましたよ(笑)。
その話を何人か知り合いにしてみたら、「それは女王様というものだよ」と言われて、そこで初めてSMという言葉を耳にしました。そのうちの一人の男性が詳しく調べてくれて、「気になるなら行ってみたら」とシオラの電話番号を教えてくれたんです。
いま考えると、その人もM男性だったと思うんですけどね。
女王様って何をしなくてはいけないのかよくわからないまま、とりあえず行ってみたらリエさんに面接をしていただいて、その面接のうちに「じゃあ、お名前は何にしますか」というお話まで進みました。
早川)即採用だったんですね。決め手は何だったんでしょう。
朝霧)会った瞬間に採用を決めましたね。「女王様がいらっしゃった」と直感でわかりましたから。決め手があったというより、落とす理由がなかったのよね。
長期的な目線で、M男性に何を与えていけるか
早川)そこから実際にプレイをしてみてどうでしたか。
真珠)驚きの連続ですよ!「顔の上に座って」なんて、それまで頼まれたことなかったですから。ただ、それまで生活してきて、「何かはまらない」感覚があったんです。
それが女王様になることで「私がやりたかったのはこういうことだったんだ!」と腑に落ちました。だから世界観にはすっと入っていけましたね。もともと相手を拘束したり、縛ることだけは好きだったんですが、自分がなぜそれを求めていたのかもわかりました。
早川)じゃあ、楽しい気持ちのままにどんどん進んでいった?
真珠)もちろん悩んだこともありますよ。何も知らないまま入ってきただけに、何を与えればその人に応えることになるのかわからなくて。
OLをやっていたから、一回のプレイでいただくお金がどれだけ大きいかはよくわかっていました。
あの頃はさすがにナチュラルだとか言っていられなかった(笑)。何が何でも心を引きずり出さないと、という気持ちでした。対価に見合うことがまだ何もできなかったから。
早川)安くはないお金を払ってマゾをしに来るって、考えてみればすごいことですよね。確かに生半可な気持ちでは受けられない。
朝霧)でも、だからといって媚びる必要も、その場だけで結果を出す必要もないのよ。そのM男性と長期的な目で関係を育めればいい。ただ、投資してもらった分はこれから伸びようという意識を持つことは大事。
一年後でも数年後でも立派なドミナになって、返していこうという。それを理解できているかどうかは、その後の成長に大きく関わります。
相手を見て、相手に合わせたスキルを磨く
真珠)悩みながら、「この人にはこういうプレイが必要だから、今度はこのスキルを身につけよう」という感じで技術も磨いて。といって、技術のための技術として身につけることはなかったですね。
たとえば縛りは、「今現在はあまり乗り気じゃないけど、一度縛られたら絶対好きになるだろうな」という人をどう「縛ってもいいですよ」と言わせるかまで含めて考えました。そうなると確かに長期的な目線にはなりましたね。
朝霧)真珠さんは理想的なスキルの磨き方をしたんだと思いますね。梱包屋さんみたいに「こなしていく」縛りではなくて、目の前にいる人に必要な縛りは何か考えて技術を身につけ、縛っていた。安全性を確保するための最低限の講習は必要だけど、講習はその人ができる枠をつくるために行うことじゃない。
女王様はM男性に求められていることを感じ取って、合わせて成長することでどんどん伸びるから。
真珠)私が入った当時は手取り足取り教えるようなことがなかったのが、逆に良かったのかな。先輩女王様も「見て覚えなさい」という感じだったし。
そんな中で長い時間吊るためにはどうしたらいいのか、体に怪我のある人も負担なく縛るにはどうしたらいいのかなどを、その人に合わせて考えました。
そこからまた、したいプレイの幅も広がっていった。 加えてありがたかったと思うのが、いい先輩に恵まれたこと。
リエさんを始め、瀬里奈さんや氷室イヴさんといった個性豊かな先輩たちのいいところを真似させてもらったことで、逆に自分の個性を踏まえて、それを引き立てられるようになったと思います。
朝霧)真似が真似で終わらなかったんだね。真似だけして、オリジナルを確立できない人もいるから。
真珠)真似しながらも、自分の個性は何だろうというのは常に考えていました。容姿に関しては最初から真似はせずに自己流でいっていたので、それが一本軸になってよかったのかもしれません。
17年間の「節目の時期」
早川)17年間の中には、「振り返るとここが節目になっていた」という時期がいくつかあるのではと思うのですが。
真珠)フランスやイタリアのヴェネチアに、プレイ体験も兼ねて旅行したことは大きかったですね。もともとお耽美な雰囲気が好きで、プレイでも意識していたんですが、それまで以上にM男性を妄想に巻き込めるようになりましたよ。
朝霧)ヴェネチアにいる真珠さんは美しかったですよ~。ドレスと雰囲気が背景にマッチして。
真珠)石畳、豪華絢爛なお城、ダンジョン、薄暗い地下道などなどいろんなものを見たんですが、今もSMをするうえでのイメージの源泉になっていますね。
その風景までM男性にまで見せられるわけではなくても、自分が経験して、自分が言葉にできることがあれば、そういう雰囲気の世界にいざなってあげることはできる。
朝霧)古城まで知っているのと、ホテルの部屋しか知らないのとでは、脳裏に描けることが変わるし、セッションの内容も変わりますよ。
早川)本人が知っていること以上のことは実現できないですものね。
真珠)海外を知ったことで、お耽美度がより上がりました。
早川)お耽美が好きといって、本当にお耽美の世界を実現させられる人はそうそういないですよね。
真珠さんの場合はもともとメイクやおしゃれが好きという基盤があって、その美意識にヨーロッパの経験がしっかり根を張った感じがします。
17年続けられた理由
早川)そういう節目はあったにせよ、17年も続いたのはやっぱりすごいことです。
振り返ってみて、「こういうことをした/心がけていたのがよかったのでは」と思うことはありますか。
真珠)うーん、M男性に執着しないことかな。「より変態にしたい」というような気持ちはあるけど、それは執着とは違う。
セッションという「点」だけではなく、「線」である生活も必要だし、男性だからほかの女王様とプレイをしたくなることもあると思う。無理をしてこう考えているわけではなく、もともとそういうことがあまり気にならないんです。
「心の中のどこかに残っていてくれたらいいな」というぐらい。その上で「僕はやっぱり真珠様に首輪でつながれていたいです」みたいなことになったら、いちばんですよね。
会えなくなっても記憶に残ればいいし、最終的には死ぬ前に思い出してもらえればいいな、というぐらいの気持ちです。
朝霧)女王様がM男性に「私以外とセッションしてはダメ」と命令する話をよく聞くけど、「とりあえずつなぎ止めておく」というのは、相手が何を本当に求めているのかを見ようとしていない、つまり相手の人格を無視しているということなんです。
人と人の付き合いにならないから、そこから何も構築できない。新人の頃はそれも勢いがあっていいかもしれないけど、ずっとそのままのスタイルだと、長期的に続く関係は築けない。
真珠)SとM以前に、人と人として向き合うことが大事ですよね。セッションごとにひたすらその人と向き合おうとしたことで、結果的に長い関係性を育めて、SM自体も長続きさせられたのかもしれない。
朝霧)SとMの関係というと、みんな特殊なものだと思っちゃう。確かにお金もいただいているし、普通の女性と違う努力をしなくてはいけないこともあるけど、人と人が10年、20年付き合うのは当たり前にあることでしょう。
最低限の礼儀に気をつけて、お互い成長しようとしているうちに、気づいたら長い付き合いになっていたりする。ほかの人間関係と同じです。
真珠)あとはね、いつも素敵でいようとは心がけていましたよ。「今日も素敵でよかったです」と言ってもらえると、次へのモチベーションにもなりますし。
心でつながっているから「会えるのがご褒美」
早川)M男性の好みや傾向みたいな表層的なものは時代に合わせて変わっていくのでしょう。
でもそれも含めた人と人との付き合いなんだと思うと、真珠さんを慕うM男性が17年途切れないことも不思議ではないですね。
朝霧)景気がいいときは前のめりなハードプレイをしたがる人が多いので、肉体的に攻めきることができれば、SMをそんなに理解していない女王様でもやっていけるんです。
でも景気が悪くなると、みんな折れやすくなるからね。ちゃんとその人を見て、攻め方を変えていかないと、通用しなくなる。
真珠)最終的には対人間として、心と心でつながろうとすることが大切。セッションのときには人間扱いされたくないという人もいるけど、それはまたべつの話で……。
早川)真珠さんのファンって、SMというより真珠さんが好きな人が多いイメージが昔からあったんですが、理由がわかりました。
真珠)うふふ。心と心だけに励ましていることは多いですよ。悩み相談っぽくなったりもすることもあるし。
もはや会えるのがご褒美と言ってくれる人もいます。その一方で精神的に追いつめていったり、励ましながらひどいことをするのも好きなんですけど。
早川)苦しめている人が励ましてくれることに意味があるんですよ。
朝霧)飴と鞭のバランスがいいんでしょうね。
真珠)そういうつながりがあるからなのか、よく「死なない程度に殺してください」とも言われます。バーチャル臨死体験をしたいと。
早川)そういえば以前、「SMは生まれなおし」だとリエさんが言っていましたが、それってつまり「死なない程度に殺してください」ってことですよね。
朝霧)M男性には子供の頃にいい子で、反抗期を迎えずに大人になっちゃったというような人も多い。だから反抗期を体験させてあげる。育て直すんだよね。
早川)「殺す」ってSMに関しては幅が広くて、プライドを壊すこともあるし、肉体を追いつめることもある。
徹底的に抵抗できなくするというのもありますよね。そう考えると、真珠さんは殺し方の幅が広い。だから真珠さんに殺されたいのかな。
真珠 プロの殺し屋です(笑)
SMをしてみたい女性へ
早川)18年目に向けた抱負は?
真珠)のんびりやっていきたいですね。
朝霧)真珠さんは毎年、目標が「のんびりやる」なのに、達成した試しがないんですよ。
「せっかく問い合わせてくれたのなら」って、ごはんの時間も入れずにセッションを受け付けてくれたり、臨時出勤をしてくれたり……。
早川)真珠さんはおっとりしているから一見気がつかないけど、よく見ているとすごく動いていますよね。
真珠)好きでやっていることだから、多少は無理しちゃうというのはありますね。
朝霧)大丈夫? 「ゆっくり」の仕方、わかる?(笑)
私もそうだったけど、生活の一部に組み込まれているから、比重をどうしたらいいかわからないんだよね。ごはんを食べるのと同じ感覚だから。
真珠)じゃあ、「ゆっくり」はやめて、「自分の時間をつくる」にしましょうか。
美術館にも行きたいし、お花やお茶も再開したいですね。美を培う時間をつくりたい。
早川)今以上にお美しくなるんですね……! それとこれは17年続いた真珠様にこそ聞きたいのですが、これからラ・シオラでSMをしてみたい女性に向けてアドバイスはありますか?
こういうふうに経験を重ねると楽しいですよ、というような。
真珠)何ごとに関しても優先順位を決めて、自分を見失わずやればいいのかなと思います。
無理しないといけないところもあるけど筋は一本通して、自分を落とさず、高めていけるようにやればいいんじゃないかな。線引きをちゃんとしておかないと、吸い取られるばかりで終わってしまうこともあると思います。
ラ・シオラのコンセプトである「50/50のSM」を心がけていれば、続けられますよ。楽しませていると見せて、自分もちゃんと楽しみましょう。
早川)では、M男性に向けてメッセージはありますか。
真珠)私のセッションは予約が取りづらいので、「敷居が高い」と思われることがあるんです。
でも、そこでもう一歩前に出てきてほしい。人間は明日何があるかわからないのだし、後悔する前に私とSMをしましょう。
早川)名言ありがとうございます!
真珠女王様 - Domina SHINJU
【インタビュイー・プロフィール】安定した人気と実力を長く継続しているエクセレントドミナ。 美と艶、包容力、芯の強さ、大人の女性の魅力「全て」が真珠様の中に存在します。この世界のドアを初めて開くM紳士・M淑女から熟練者まで、自信をもって紹介します。まずは安心感を伴ったセッションに身を委ねて下さい。
早川舞 - Mai Hayakawa
【インタビュアー・プロフィール】 女王様と編集者の二足のわらじを経て、SM・フェティッシュ分野を得意とするライターに。SMを実際に知る人ならではの視点の記事をSM専門誌・サイトを中心に寄稿する。別名義でインタビュー記事、書籍なども手がける。
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